猫のきおく

   シーン15

今日は日差しが無い。少し冷たい風が吹きつけた。ブロック塀の向こうからクロスケがゆっくりと近づいて来る。目がヤル気になっているがわかった。どうして、その気になっているのかわからない。ならばこちらもその体制にもってゆかねば・・・。今日は黒カラは居ない。頭ん中でいろいろと想定した。やはり最初に向こうから手を出すようすればいいかな。たぶんあいつは左手で最初の一撃をかましてくる。それを左斜めにかわしながら右の一撃をかぶせて応酬する、その反動を利用してすぐさま左手でもう一撃を与える。これで向こうはそうとうダメージに思うに違ない。大丈夫だ、クロスケはカラスの鳴き声で逃げるほど気弱だ。いきなり頭一つに間がちぢまった。ヴーとかギャーとかうなっている。俺もガァーと叫んでいたと思う。しばらく、にらみ合いが続いた。こいっ 早く手を出してこい。こっちはそれを待っているんだ。 キタァー。シャーという声とともに黒い左手が飛び出した。右耳にかかるのをかわしながらすぐさま俺は右手の一撃をかぶせた。そして渾身の左手であいつの右耳の後ろにかましてやった。どうだ  クロスケはブロックからすっとんで逃げて行った。今日は少し寒い。道路の向こうからかけるが帰ってくるのが見えた。おいっ、俺の強いの見届けたか・・・ 

   シーン16

夕方になって、庭に面した窓を開けて外に机を置いていた。お父さんがその上で大きな肉を焼いていた。その他、野菜とか何か貝が載っている。部屋ん中の窓際に机を移動して、今日はみんなが揃っている。さっきから、ワイワイと何か話をしたりしていた。俺は、近くのソファーに座り、その様子を眺めていたが、ずいぶんといい匂いがしてきている。お父さんが、焼けたよっていいながら、最初に貝みたいなものを、庭先からみんなにお母さんが手渡ししていた。みんなは黙って食べていたけど、お父さんが厚みのある肉をまな板に載せて切り始めて、取り分けたら、口々においしいーっとほおばっていた。すずりチャンは気づいたように、俺のほうにも切り分けて

差し出してくれた。少し赤い汁がにじんでいる。おいしいーフニャフニャとうなった。おとうさんもうれしそうに、「そうかプチかぼちゃもあるぞー」と・・・。えぇー前は成り行きでにんじん食べたけど、もうごめんだよー。おかあさんは「よしなさいよ」って言ってくれたけど、すずりチヤンは肉の汁をつけて、そのかぼちゃも取り分けて差し出してきた。仕方なしに食べてみたが、やわらかくてまぁまぁだった。

食事が終わったのか、かけるはお風呂にいったみたい。すずりちゃんとお母さんは、臭いがするとかで窓を開けて扇いだり、洗いものをしたり忙しそうに動き回っていた。お父さんはソファーで何か飲みながら伸びている。俺は、それでお父さんの膝の上にのってゆくとやさしく頭から身体をさすってくれた。初めてのことだ。お母さんがそれを見て、「ヘェー」と少しおどけてみせた。