猫のきおく

   シーン19

その日、外は寒い。みんなは天ぷらにそばを食べている。食事が終わって、お父さんがすずりチャンをソファーのある部屋に話があると誘った。すずりチャンは俺を膝に抱いて、お父さんの向かいに座った。お母さんも横に座った。かけるは何かを察したのか来ない。

お父さんは、「今年ももうすぐ終わりだなぁー。すずりは〇ん高しか受けないそうだが、それで、いいのか。人生には予期せぬことが起こる。信用していないわけではないが、まんがいちってことがあるだろうー。〇〇学園も受けておいたらどうかな」すずりチャンは一瞬、俺を抱いている手にギュッと力入れた。少し間を置いて、「私は絶対に〇ん高に行きます」と はっきり答えた。「なずなチャンとも二人揃って行くって約束したし・・・。絶対頑張って行く」真っ直ぐ、お父さんとお母さんの顔を見ていた。お父さんは、「そうかー君を信じるよ」と・・・。すずりチャンは「じゃー」と言って、俺を抱いたまま階段を上った。

そのまま二階のベランダに出て、星空を見ていた。寒いだろう・・・。暗い空に一筋の光が上の方に昇っていったかと思うと上の方で大きく広がって消えて行った。そして大きな音がしたが、突然、すずりチャンは俺を抱いたまま右手を上に真っ直ぐに突き上げて、「ゆくぞ、〇ん高ぉぉー」と叫んだ。俺はびっくりして腕から飛び降りて、すずりチヤンの方を見ていた。

  シーン20

朝がきた。すずりチャンは夜どおし起きて机に向かっていたようだ。ときおり、窓を開けて大きく両腕を伸ばして思いっきり息を吸い込んで・・・ベッドで寝ている俺の頭をなでて、又、机に向かっていた。

その日の朝の食事はみんながソファーに揃っていた。すずりチャンは顔を洗って俺と最後に行ったんだけど、お母さんは着物姿だった。お父さんが「明けましておめでとう」と言って、皆が口々に「おめでとう」と言っていた。飲み始めたお父さんは、「すずりとかけるは上の学校に行くし、お母さんはお店を任せられるし、お父さんの事務所は移転するし、今年はみんなが頑張る年だなー」又、コップについで飲んでいた。机の上には色んなものがのっていて、すずりチャンとかけるが時々俺にも分けてくれた。

ある程度食べ終わった頃、お母さんが「みんなで初詣に行ってお願いしょ」って言い出した。お父さんも「そうだなぁー」って言ったけどすずりチャンは黙っていた。お母さんは追いかけるように、「ねぇーすずり、着物をきてほしいのよー・・・」すずりチャンは 「ごめんなさい、自分で頑張って合格するから、着物は受かったらその後お礼に行く時に着てゆくから・・・」結局、三人で出掛けたみたいだった。残ったすずりチャンはますます気が高まっているみたいだった。で、「プチ シャワーするよ」って連れていかれた。とんだとばっちりだったが、お湯をかけながら、「共同体だょ」ってすずりチャンがつぶやいた。でも、出た後はたぶん寒いだろう・・・