猫のきおく

   シーン13

涼しい日が続くようになって、朝、すずりチヤンがあの紅色のリボンをつけて出掛けて行った。続いてかけるも背中に荷物を背負って勢いよく出て行った。つぎは、お母さんかなってかまえていると、ガァガァと床面をやりだした。なんだか気味が悪いので、俺はあちこちに逃げて遠巻きに監視していた。そうだ、たまにすずりチャンも自分の部屋ん中をやっていた。あちこち一通り終えたのか静かになって、お母さんがプチ お庭に出るわよって言って、ガラス戸を開けて待っていた。ピッタリとしたズボンをはいているが足がスーッとしている。すずりチャンはお母さんに似たのかー、でも髪の毛は短く切っている。大きな帽子をかぶって、庭の草をむしり始めた。隅っこのほうには、白とか黄色の小さな花が咲いている。

車庫の柵の外からこんにちわと声がした。小さな白い犬を連れた女の人がほほ笑んでいる。振り返ったお母さんはこんにちわと返しながらそっちに寄っていった。親しげに話をしていたけど、俺の姿を見たあの犬が柵の下からのぞきだすように、向かって吠えてきた。バカ犬め、俺は知らんふりして何気なく、花に寄る蜂を見てやりすごした。あの犬は繋がれているから自由に動けない、かわいそうに・・・。