猫のきおく

猫のきおく

   シーン8

海辺に着くとすずりチャンはリュックからポリ袋を取り出して、波がすれすれくるところで砂を掘り、それを浸していた。かけるは先に来ていて、靴を脱いで、波に向かって笑いながら足を蹴り上げていた。すずりチャンもそのまま波打ち際まで歩いて行ったが、俺はとんでもないと踏ん張っていた。だから紐の距離があったのかもな。しばらくして二人は大きなボールを投げあってキャーキャー言いながら遊んでいた。すずりチャンの髪の毛が背中で興味ありげに激しく振れていた。かけるもすずりチャンとおなじような服を着ていて、帽子だけは紺色で横に金に光る角みたいなものを付けている。こういうのを見ると遠目には確かに二人は仲の良い姉弟に見えるんだろうな。確かに二人がこうしているのを見るのは俺も初めてだ。少し離れたところでは、人がいっぱい居て、色んな傘が立っていて、音楽も鳴っていて、騒がしくしている。紐はもう外されていたが、俺は二人の近くで落ちているものの匂いを調べたり、砂をかいて掘ったりしていた。もう飽きたみたいで、さっきの波に浸っていた袋を取り出して、二人座って、それの中のものを食べだした。ああご飯だったんだ。すずりチャンは俺にも肉を差し出してくれた。並んで三人して食べました。帰りも同じようにして帰ったんだけど、近くの坂道に来ると、網袋から解放された。小走りに、ときおり後ろを振り返りながら駆け上がった。すずりチャンも懸命に上がって来る。日差しが当たらない反対側を頑張っているが、すずりチャンの太ももがほんのり赤く光っていた